「Cities for Better Health」 (外部サイト、英語) は、都市環境における深刻な慢性疾患の予防へ取り組むプログラムです。この予防への取り組みを通じて、地域における健康格差を解消し、持続可能なヘルスケアシステムを構築することを目的としています。市の指導者や省庁、学会、糖尿病協会、健康保険会社、コミュニティグループ、企業などを含む150以上のローカルパートナーが、分野を超えた新たな形の官民パートナーシップで協力し、課題を特定し、新しい健康行動とポリシーを提供し、健康に影響を与える他の課題に関連づけています。
日本においては、超高齢化が糖尿病増加のリスク因子になっているという日本特有の糖尿病増加の要因を踏まえて、2018年2月13日に日本初のCities for Better Healthプログラムとして、福島県郡山市と「糖尿病対策に関する包括連携協定」を締結しました。2018年8月1日には、データ統計分析等に医学的助言や支援を得るため福島県立医科大学医学部衛生学・予防医学講座も加わり、「郡山市」を日本一健康な都市にするという理念の下、「郡山市における糖尿病対策についての共同研究」が始動しました。
郡山市においては、国民健康保険被保険者における糖尿病のある方の人数および割合が年々増加し、人工透析患者の50%以上が糖尿病を合併しています。このため、糖尿病に関する正しい知識の普及啓発、特定健診および特定保健支援の普及啓発や健診後の受診勧奨を行うことにより、糖尿病の予防および早期発見・早期治療、重症化予防につなげることが大きな課題の1つとなっています。
そこで、郡山市における糖尿病対策の実践的指針を見出すことを基本方針とし、糖尿病治療状況に影響を与える郡山市特有の社会、文化、環境要因を把握することが郡山市においてより効果的なアクションプランの作成につながり、ひいては糖尿病性腎症等の合併症の重症化予防に貢献するものと考え、糖尿病の治療中断に影響を及ぼす要因を探るとともに、15地区の特性を知るための調査 (インタビュー調査、アンケート調査、データベース解析) を実施しました。
インタビュー調査の結果によると、糖尿病治療を中断する人の傾向として、糖尿病治療により経済面の負担や生活に制限が生じると考えていること、糖尿病の具体的な経過や生活上の苦労が想像できないこと、飲酒が生活に入り込んでいることなどがわかりました。一方、糖尿病治療を継続できている人は、糖尿病による致命的な事態を具体的に想定できており、糖尿病になったことで健康の重要さを理解して健康管理への意識が向上していること、自立生活を重要視し、介護や家族などへの負担を懸念していることなどがわかりました。
アンケート調査においては、治療中断者では、糖尿病への正しい理解や認識が不足している人、時間の使い方を自身で自由に決められない人が有意に多いという結果が認められました。治療継続者では、家族など身近に糖尿病のある方がいる人が多かったことから、治療の必要性を具体的かつ身近に捉えやすいため、治療を継続しやすい可能性が考えられました。なお、治療継続者においても、自身が糖尿病であると認識している者の割合は7割程度に留まっており、患者教育の必要性が示唆されました。
さらに、データベース解析では、市内15地区の患者数や治療を中断する割合などを算出し、この結果は、各地区の保健師が介入していく際の参考に使用されます。
郡山市は、本共同研究結果の市民への周知を行うとともに、医療・保健等の関係機関へ情報共有をすることでそれぞれの活動に活かしてもらうほか、2020年度から「郡山市糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を実施し、医療機関未受診者に対する受診勧奨や、重症化予防対象者への保健支援などを実施します。
本共同研究の詳細については、こちらから。